[記事公開日]2016/05/19

オーロラや地球温暖化の研究と共に人工衛星を太陽活動や宇宙ゴミ(デブリ)から守るレーダー

     「EISCAT 3Dレーダー」のイメージ(国立極地研究所提供)

超高層大気や宇宙を北極圏から探る世界最大級のレーダー計画

地上約2000キロメートルまでの超高層大気や、宇宙を北極圏から探る世界最大級のレーダー建設計画が、ヨーロッパと日本の協力でスタートします。

建設が計画されている世界最大級のレーダーは「EISCAT(欧州非干渉散乱=アイスキャット) 3Dレーダー」と言いますが、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドの北極圏の5か所それぞれに、約1万本のアンテナを立てて、超大型レーダーを構成するようです。

日本はレーダーの心臓部にあたる送信機を担う方針であり、ノルウェー北部で今年2016年から、実証システムの建設が始まりますが、「EISCAT 3Dレーダー」の本格運用は2022年が予定されているようです。

「EISCAT 3Dレーダー」の主目的は、太陽活動が地球大気へ及ぼす温暖化などの影響や、オーロラが生まれる仕組みなどを観測することですが、それだけではありません。

人工衛星を太陽活動や宇宙ゴミ(スペースデブリ)から守ることも期待されています。

ところで、「EISCAT」とは、何でしょうか?

 

「EISCAT(欧州非干渉散乱)」科学協会と国立極地研究所

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「EISCAT(欧州非干渉散乱=アイスキャット)」科学協会は、非干渉散乱(IS)レーダーを用いたヨーロッパにおける宇宙科学の研究や教育を推進するために、レーダーの建設と維持・運用を主目的として、ヨーロッパ6カ国(独、仏、英、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド)が共同出資して、1975年に設立されました。

現在運用中の「EISCAT レーダー」は、1981年に稼働が開始され、70~1500キロ上空の大気やオーロラの観測が行われてきました。

日本も1996年に参加し、国立極地研究所が300キロ上空の大気が30年間で約40度も冷えたことを明らかにしています。

また、フィンランドの研究チームは2007年に宇宙ゴミ(スペースデブリ)を連続観測し、約4千個から7千個に急増したのをとらえましたが、これは、中国がミサイルで衛星破壊実験をした直後だったと言います。

そして、現在運用中の「EISCAT レーダー」は、デジタル通信や放送の電波干渉を受けるようになり、役割を間もなく終えることになります。

 

「EISCAT 3Dレーダー」は「宇宙天気」を予測し、人工衛星を太陽活動や宇宙ゴミ(スペースデブリ)から守ることも期待されている

現在運用中の「EISCAT レーダー」の後継となる「EISCAT 3D」は、電波の送信パワーが約6倍になり、無人で連続運用できると言います。

1万本の小さなアンテナで観測方向を瞬時に切り替え、3次元(3D)立体観測が可能になり、より広範囲をすばやく観測できるようになります。

観測性能は50~100倍となり、高度1千キロで1・5センチ以上の宇宙ゴミ(スペースデブリ)も検知できる能力だと言いますから、2022年に運用開始予定の世界最大級のレーダーは、すごい性能を持つことになります。

『極光オーロラは太陽からのプラズマの風と地球磁場の相互作用が織り成す自然のカーテン』、こちらの記事の中でも書きましたが、極光オーロラ発生原理の肝要な部分については、未だ統一した見解はないとされていますが、オーロラが生まれる仕組みを解明することも「EISCAT 3D」の主目的の1つですので、将来的な観測による成果が、大いに期待されるところです。

また、「EISCAT 3D」は高度1千キロで1・5センチ以上の宇宙ゴミ(スペースデブリ)も検知できる能力だと言いますから、人工衛星を宇宙ゴミ(スペースデブリ)から守る役割も期待されているようです。

『宇宙でのゴミ対策と深刻な問題となったスペースデブリ(宇宙ゴミ)』、こちらの記事の中でも書きましたが、現在、推定で5兆8000億個もの宇宙ゴミ(スペースデブリ)が地球の周囲を飛び交っていると考えられていますが、宇宙ゴミ(スペースデブリ)は高度900kmと1500kmあたりが最も多く、人工衛星と同じ速さで漂っており、軌道上での宇宙船の活動は宇宙ゴミ(スペースデブリ)の監視なしには困難になっていると言います。

ぜひ、「EISCAT 3D」には人工衛星を宇宙ゴミ(スペースデブリ)から守る役割についても大いに期待したいところです。

さらには、「EISCAT 3D」には人工衛星を太陽活動から守る役割も期待されています。

太陽活動が活発になり地球上空に来ると、人工衛星に影響を及ぼす恐れがあるからです。

太陽活動を観測し上空の環境をとらえること、つまり「宇宙天気」の予測が必要であり、「EISCAT 3D」は「宇宙天気」の予測においても、重要な役割を期待されているようです。

太陽からふき出す電気を帯びた粒子「太陽風」のエネルギーが地球に及ぼす影響「宇宙天気」を予測することは、人工衛星を守るためだけに必要な訳ではありません。

『宇宙天気予報は太陽フレア・太陽プロトン・磁気嵐などを宇宙天気情報センター(SWC)が予測』、こちらの記事の中でも書きましたが、「太陽風」からの高エネルギー粒子が地磁気を乱すと、人口衛星だけではなく地上の電力網に悪影響を及ぼすことがありますので、航空機や船の無線通信、GPS(全地球測位システム)に障害が出る恐れもあります。

「EISCAT 3D」は「宇宙天気」の予測においても、将来、重要な役割を期待されていますので、世界最大級のレーダー建設計画が、ヨーロッパと日本の協力で動き出したことは、頼もしい限りです。

JAXA(宇宙航空研究開発機構)は、宇宙ゴミ(スペースデブリ)が接近すると回避させる指令を衛星に送るために、「EISCAT 3D」を使った研究を検討しているとのことです。

また、国立極地研究所の宮岡宏教授は「世界最高性能の大気レーダーを完成させ、日本が研究をリードしたい」と期待しているとのことですので、2022年に予定されている、「EISCAT 3D」の本格的な運用開始が楽しみなところです。

 

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