[記事公開日]2016/04/27

衛星「ひとみ」の製造費用は300億円投入されておりJAXAの運用に文部科学省も問題視

X線観測衛星「ひとみ」のトラブル原因についてのJAXAの見解

『X線観測衛星「ひとみ」は地球を回る軌道からの電波が通信不能でトラブルや分解した可能性』、あるいは『X線観測衛星「ひとみ」が通信途絶から復活できるかは太陽光発電の電力回復が鍵』、こちらの記事の中でも書きましたが、X線観測衛星「ひとみ」に3月26日にトラブルが発生して、通信不能の状態が続いています。

JAXA(宇宙航空研究開発機構)は、4月15日、通信途絶中のX線天文衛星「ひとみ」のトラブル原因について、有力な可能性を発表しました。

それによると、X線天文衛星「ひとみ」は、姿勢制御機能の異常でまず18時間で1回転というゆっくりとした回転を起こした後、緊急時の安全モードの設定ミスにより急激に回転して、分解に至ったというものです。

そして、衛星「ひとみ」は、二重のトラブルにより、「自分で回転」して分解に至ったと推定されているようです。

ただ、今回JAXA(宇宙航空研究開発機構)が発表したのは、衛星「ひとみ」のトラブル原因の推定であって、「ひとみ」の状態は依然として不明なままとなっています。

衛星「ひとみ」は分解して、一部が破損していると考えられていますが、「ひとみ」の破損状況が判明するにはまだ時間が掛かると考えられています。

JAXAでは原因究明と、復旧へ向けた衛星追跡を続ける模様ですが、X線観測衛星「ひとみ」の開発には300億円もの巨額の費用が投入されており、巨大プロジェクトの運用に関して、文部科学省も運用を問題視しているようです。

 

衛星「ひとみ」は「宇宙の天文台」として300億円かけて開発された国際協力ミッション

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X線観測衛星「ひとみ」は、2016年2月17日に打上げられた日本のX線天文衛星になります。

JAXA(宇宙航空研究開発機構)がおよそ310億円かけて開発した「宇宙の天文台」であり、世界の天文学者から期待が寄せられていました。

X線観測衛星「ひとみ」は国際協力ミッションであり、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が中心となり、日本国内の諸大学、アメリカ合衆国およびヨーロッパ諸国との国際協力によって計画が推進されています。

X線観測衛星「ひとみ」は、従来より10倍以上優れたX線エネルギー計測精度を持つ革新的な軟X線超精密分光望遠鏡システム、高精度イメージング能力により従来より10倍以上の高感度を持つ硬X線/ガンマ線検出器を搭載していると言います。

X線観測衛星「ひとみ」は、300億円もの巨額の開発費用が投じられた巨大プロジェクトになりますが、今回、その運用に関しての問題点を指摘する声も上がっているようです。

例えば、衛星「ひとみ」は24時間体制での監視システムが取られていませんでした。

 

衛星「ひとみ」の姿勢変更後に地上で監視せず、トラブル発生から20時間後に可視

衛星「ひとみ」との通信のための地上局は、鹿児島県の内之浦と千葉県の勝浦にあり、送受信の制御は相模原の宇宙科学研究所(ISAS)で行われています。

3月26日、衛星「ひとみ」はそれまで観測していた「かに星雲」から「活動銀河核」へ、望遠鏡の向き(姿勢)を衛星ごと変更しました。

3時22分、計画通り姿勢変更に成功したと思われていますが、この姿勢変更は、監視がない状況で行われていました。

内之浦局の可視は3時13分に終わり、その次は23時39分まで20時間以上なかったのですが、衛星「ひとみ」を「かに星雲」から「活動銀河核」へ向ける姿勢変更は午前3時1分から21分間かけて行われています。

つまり宇宙科学研究所(ISAS)の管制室は20時間もの間、内之浦局で姿勢制御の結果を受信することができない状況の中で、姿勢変更が行われたのです。

そして、その直後の4時10分頃、姿勢異常が発生したと推定されているようです。

16時時40分に再びミンゲニュー局上空を通過した「ひとみ」は既に壊れていたので、電波を送ってこなかったと言います。

トラブル発生から20時間を経た23時39分の内之浦局可視では、「ひとみ」はデータを読み取ることができないほど弱い電波を3分間だけ送信したようです。

この点について、文部科学省の有識者委員会である宇宙開発利用部会では「なぜ、内之浦局の可視がない時間帯に姿勢変更を行ったのか」という疑問が出されたようですが、JAXA側は「すでに運用が安定していたので大丈夫だと考えていた」と答えたとのこと。

この間、もし可視が24時間体制で行われていれば、「ひとみ」を復旧させるチャンスは3回ほどあったようです。

大規模システムでありながら24時間の監視体制をとらず、監視時間外に重要な作業を行ってしまったことは、大規模システムの開発運用としては問題点もあったということが言えそうです。

24時間体制の監視システムを運用するとなると、予算などの面で運用が難しい部分もあったのかも知れません。

24時間常駐する監視員を配置するとなると、人件費などのコストもかかることにはなります。

しかし、300億円もの開発費が投入された巨大プロジェクトの運用システムを、24時間体制で監視していないというのは、一般的な考え方からすれば、異例と感じる人も多いのではないかと思われます。

今回、監視時間外に重要な作業を行ってしまったというのは、残念なことだと思います。

文部科学省の有識者委員会である宇宙開発利用部会では「ひとみ」の事故原因を探る小委員会が設置されることが決まりました。

『「はやぶさ2」の目的はイトカワと同じ地球近傍小惑星「リュウグウ」への着陸とサンプルリターン』、こちらの記事の中でも書きましたが、小惑星探査機「はやぶさ」は、トラブルを乗り越えて、地球重力圏外にある天体の固体表面に着陸してのサンプルリターンに、世界で初めて成功しました。

また、『金星探査機「あかつき」は失敗後の軌道再投入での試験運転に成功し4月中旬から本格観測』、こちらの記事の中でも書きましたが、金星探査機「あかつき」は、メインエンジンのトラブルで軌道への投入に失敗した後に、見事、復活し、軌道への再投入に成功しました。

「宇宙の天文台」として世界の注目を浴びて打ち上げられた、X線観測衛星「ひとみ」も、なんとか復旧してほしいものですが、予断を許さない状況なのかも知れません。

 

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