[記事公開日]2016/02/06
[最終更新日]2016/04/09

「補償光学」という技術によって地球上の望遠鏡でも宇宙の望遠鏡を上回る鮮明な像が実現

             国立天文台ハワイ観測所すばる望遠鏡

地球上にある望遠鏡と宇宙にある望遠鏡の特徴とは

『宇宙からの可視光以外の赤外線やX線などの電磁波は人工衛星に搭載された望遠鏡で観測』、こちらの記事の中でも書きましたが、地上では観測できない波長(赤外線やX線など)の光の天文観測を行う場合は、宇宙に人工衛星を打ち上げるのが最良の方法です。

天文学者たちが使う望遠鏡は、目に見える可視光線を観測するものだけではありません。

天文学者たちは、電波、赤外線、紫外線、X線、ガンマ線など、あらゆる波長の光(電磁波)で天体を観測しており、そのためには、地上からは観測できない波長の光(電磁波)は人工衛星に搭載された望遠鏡から観測する必要があるからなのです。

宇宙から来るあらゆる波長の光(電磁波)のうち、地上に届くのは可視光線の全領域の他には、赤外線・紫外線・電波の一部くらいのものなので、ほとんどの波長の光(電磁波)は地上まで届かないのだといいます。

そのため、地上では観測できない波長の光(赤外線、紫外線、X線、ガンマ線など)は、人工衛星に搭載された望遠鏡や観測装置で、宇宙から観測されることになります。

また、100億光年を大きく超えるような遠方の銀河は、宇宙膨張の結果として、光の波長が伸びてしまい、可視光では観測しにくくなってくるといいます。

そのため、そのような遠方の宇宙(初期宇宙)の観測においては、赤外線を観測できる宇宙望遠鏡の活躍が今後期待されているようです。

 赤外線を観測できる宇宙望遠鏡として、NASA(アメリカ航空宇宙局)が打ち上げた「チャンドラX線観測衛星」が知られています。

★「チャンドラX線観測衛星」

「チャンドラX線観測衛星」は、1999年7月にNASAによって打ち上げられた人工衛星であり、スペースシャトル「コロンビア」によって放出されました。

地球大気がX線の大部分を吸収するため地上に望遠鏡を設置することはできず、宇宙ベースの望遠鏡を作ることが必要だったようです。

「チャンドラX線観測衛星」は、地球と月の3分の1のところを回って、X線の観測を行っています。

一方、可視光線については、ハワイの「すばる望遠鏡」を始め地上で多数の大型望遠鏡が活躍していますし、また、「ハッブル宇宙望遠鏡」のように、宇宙からより鮮明な画像を観測することもできます。

 

可視光線については地上の大型望遠鏡の他に、宇宙望遠鏡も活躍中

可視光線については、地上に届きますので、ハワイの「すばる望遠鏡」を始め地上で多数の大型望遠鏡が活躍しています。

★国立天文台ハワイ観測所すばる望遠鏡

「すばる望遠鏡」は、アメリカ・ハワイ島のマウナ・ケア山山頂(標高4205m)にある日本の国立天文台の大型光学赤外線望遠鏡です。

主鏡に直径8.2m、有効直径(実際に使われる部分の直径)8.2mという当時世界最大の一枚鏡をもつ反射望遠鏡。

「すばる望遠鏡」には高度な技術が多数使われており、例えば、コンピューターで制御された261本のアクチュエータにより主鏡を裏面から支持することにより、望遠鏡を傾けた時に生じる主鏡の歪みを補正し、常に理想的な形に保たれている(能動光学)といいます。

また、「すばる望遠鏡」に代表されるような地上の大型望遠鏡だけではなく、宇宙では、1990年に打ち上げられた「ハッブル宇宙望遠鏡」が今でも現役で活躍中です(「ハッブル宇宙望遠鏡」は一部の紫外線、赤外線も観測しています)。

★「ハッブル宇宙望遠鏡」(略称HST)

「ハッブル宇宙望遠鏡」(略称HST)は、地上約600km上空の軌道上を周回する宇宙望遠鏡であり、グレートオブザバトリー計画の一環として、1990年にNASAによって打ち上げられました。

名称は宇宙の膨張を発見し「ハッブルの法則」を発見した大天文学者・エドウィン・ハッブルに因みます。

長さ13.1メートル、重さ11トンの筒型で、内側に反射望遠鏡を収めており、主鏡の直径2.4メートルのいわば宇宙の天文台とも言えます。

大気や天候による影響を受けないため、地上からでは困難な高い精度での天体観測が可能になります。

宇宙に行けば、大気のゆらぎの影響がなくなるので、非常にシャープな天体画像が得られるのです。

「ハッブル宇宙望遠鏡」はその特性を活かし、美しい天文画像の数々を私たちに届けてくれています。

通常、宇宙望遠鏡は打ち上げ後に修理などはできませんが、「ハッブル宇宙望遠鏡」の場合、スペースシャトルの有人ミッションによって修理や機器の交換などが行われ、今でも現役で活躍中で、美しい天文画像の数々を地球に送り続けてくれています。

しかし近年、地上の望遠鏡でも「補償光学」という技術を使うことで、大気のゆらぎを打ち消すことが可能になってきているようです。

 

「補償光学」とは

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「補償光学」は、宇宙から地球を撮影したり、地球から宇宙を撮影したりするときに問題となる大気の揺らぎを光電子的に解決するために開発された光学技術のことであり、「波面補償光学」とも言います。

宇宙望遠鏡に頼ることなく望遠鏡の回折限界までの高精度な観測が可能になるため、惑星や小惑星などの観測に用いられて衛星の発見など新たな発見がもたらされたようです。

★「補償光学」の仕組み

「補償光学」では、「可変形鏡」と呼ばれる、表面の形状を変えられる鏡が用いられますが、光の乱れ具合に合わせて変形させると、反射した光が、元の乱れていない状態に戻るのだと言います。

「補償光学」の手法では、まず観測したい天体のそばに、明るい「ガイド星」が必要になります。

この「ガイド星」からの光を使って、その瞬間の大気の揺らぎを計測し、光の乱れを打ち消すように「可変形鏡」の形状を変化させます。

そうすることで、目的の天体からやって来た光を補正し、きれいな光に戻して、シャープな像を得ることが可能になるそうです。

「光の計測→鏡の変形」は、なんと1秒間に1000回といった回数で行うといいます。

「ガイド星」からの光の乱れ具合を波面センサーで検出し、その情報に基づいて「可変形鏡」の表面の形を1秒間に1000回も形を変えて、光を元の乱れていない状態に戻すのです。

こうすることで、ほぼ同じ方向からやって来る、観測したい天体からの光も、元の乱れていない状態で観測することができます。

明るい「ガイド星」が近くにない場合は、地上からレーザー光線を照射し、高度90~100km程度の場所(「ナトリウム層」という、ナトリウムの密度が高い場所)に、明るい”人工の星”を作り出し、それを「ガイド星」代わりに使うという方法が実現しているそうです。

日本が誇る「すばる望遠鏡」においても、「補償光学」の技術で人工の「ガイド星」が作られています。

レーザー光を上空の「ナトリウム層」に向けて照射し、そこに発光する光の点を作り出します(ナトリウム原子が発光します)。

そして、この光の点の見え方の揺らぎ具合から、大気の揺らぎをリアルタイムで検出し、目標の天体からの光の揺らぎを打ち消すのです。

そして、「補償光学」の技術によって、「すばる望遠鏡」のような地上の大型望遠鏡でも、宇宙望遠鏡を上回るような性能が実現していると言います。

 

「補償光学」の技術により「すばる望遠鏡」の分解能は「ハッブル宇宙望遠鏡」を上回っている

「補償光学」の技術を使えば、「すばる望遠鏡」のような地上の大型望遠鏡でも、宇宙望遠鏡に匹敵するような性能を発揮することができるようです。

「補償光学」が普及し、その技術によって地上の望遠鏡の分解能(視力に相当。どれだけ近くの2つの点を別々の点として識別できるか)は、大きく向上したといいます。

例えば、「すばる望遠鏡」の分解能は、今では「ハッブル宇宙望遠鏡」を上回っているそうです。

宇宙では、地球上からは観測できない波長での観測が可能なので、「ハッブル宇宙望遠鏡」や「チャンドラX線観測衛星」など、様々な人工衛星を打ち上げて宇宙望遠鏡による観測が行われてきました。

しかし、今では、「補償光学」という技術によって、地上の望遠鏡でも宇宙望遠鏡を上回る鮮明な像が得られるようになってきているようです。

 

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