[記事公開日]2016/05/20

火星にクレーターを発生させた30億年前の隕石が津波を引き起こして古代の海岸線が変形

火星の地表に残る津波の痕跡を捉えた画像。上は過去の津波が到達した地域を示した可視画像、下は堆積物の巨礫状の層。ネイチャー提供(2016年5月19日提供)。

火星で30億年前に120メートルもの巨大津波が発生した痕跡を発見

火星で30億年以上前に120メートルもの巨大津波が発生した痕跡が発見されました。

今からおよそ34億年前の火星で、隕石(いんせき)の衝突によって表面に直径約30kmのクレーターが発生し、巨大津波が引き起こされて、古代の海の海岸線を完全に変形させたようです。

これはアメリカやドイツ、スペインなどの国際研究チームが19日付けのイギリスの科学雑誌「サイエンティフィック・リポーツ」で発表したものであり、火星のかつての姿を理解するうえで重要な成果として注目されています。

『火星に生命が存在する可能性を探る為に生物や水の痕跡を求めた探査が続けられてきた』、こちらの記事の中でも書きましたが、火星にかつて水があったということは、ほぼ定説として認められるようになっており、火星にはかつて広大な海が広がっていたと考えられています。

ただ、海があったと考えられる火星の地表面に海のなごりである海岸線の痕跡が見られないという疑問がありましたが、今回の研究は、火星にかつて海があったことを示す重要な研究成果となりそうです。

 

火星の北半球の地形を詳しく調べ、火星の地質図を作成

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研究チームは、火星を回っている複数の探査機の観測で得られた画像やデータを解析して、火星の北半球の地形を詳しく調べ、火星の地質図を作成したようです。

その結果、広い範囲で、岩石などが斜面を上に向かって押し上げられるように堆積している地形を見つけましたが、この地形は、およそ34億年前、火星に海があったと考えられている時期に発生した津波によって押し流されて堆積したと考えることで説明できるとしています。

今から約34億年前に起きた大規模な洪水が火星北部の低地を広大な海に変えたとする説がありましたが、この説に異議を唱える一部の科学者たちは、このはるか昔に消えた海の海岸線とされる地形は現在、でこぼこで不規則であり、海を取り囲んでいたとみられる地形ではないと指摘していました。

しかし、今回の研究成果により、今から約34億年前に起きた大規模な洪水が火星北部の低地を広大な海に変えたとする説と、一定高度に沿って分布する海岸線が存在しない謎とを結び付けることが可能となりました。

 

今回の研究では、直径30kmのクレーターを発生させた2回の巨大津波に注目

こうした大規模な洪水は、数億年の間に何十回も起きている可能性が高いと言いますが、今回、研究グループは、数百万年間隔で発生した2回の巨大津波に着目しました。

そして、これら2回の津波の中心が、それぞれ直径約30kmの2個のクレーターであることを突き止めました。

1回目の津波は、岩や土石を数十kmから数百km内陸に運びましたが、それよりはるかに寒冷な時期に起きた2回目の津波では、波が空中で凍結して巨大な氷の塊が形成されたようです。

巨大津波は、平均で約50mの高さに及んだようですが、海岸線を引き裂いて内陸部に押し寄せた際には、高さは最大で約120mにまで達した可能性が高いと言います。

それぞれの津波は、フランスとドイツの国土を合わせた面積に匹敵する程の広大な一帯を冠水させた後、火星の原初の海に退いたと考えられています。

今回、火星の地質図をマッピングしたことにより、巨岩を数百キロ運ぶほどの威力を持つ、巨大津波のような上昇流が存在したことが、堆積物の形状により明らかとなったようです。

火星の地質図作成に基づく今回の成果は、今から約34億年前に起きた大規模な洪水が火星北部の低地を広大な海に変えたとする説を後押しするものであるだけではなく、火星における生命探査の新たな手掛かりとなる可能性もあります。

2回目の津波により、初期の火星に存在した生命の痕跡を探すための場所が新たに提供されるかも知れないからです。

2回目の津波では、波が空中で凍結して巨大な氷の塊が形成されましたが、かなりのマイナス気温にもかかわらず、当初は液体の状態だったことから、海水は非常に塩分濃度が高かったと考えられています。

氷点下の、塩分濃度の高い水性環境は、地球上で生命が存在可能であることが知られていますので、火星の津波堆積物を調べることが、宇宙生物学にとって重要なポイントになる可能性もあります。

『宇宙生物学とも呼ばれるアストロバイオロジーは宇宙生命を科学的に探査し謎を解明する研究』、こちらの記事の中でも書きましたが、「宇宙における生命」を科学的に探査し、その謎を解き明かすアストロバイオロジーの研究が緊急の課題となっていますので、火星の津波堆積物は、宇宙生物学にとっての主要なターゲットとなる可能性もあるということになります。

 

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