[記事公開日]2015/12/19
[最終更新日]2016/04/09

太陽を人工的に作り人類の究極のエネルギーを求める核融合研究とITER(国際熱核融合実験炉)

人類の究極のエネルギーとしての人工太陽

人類の究極のエネルギーとして、人工太陽の研究開発が、20世紀半ばから行われてきたといいます。

自然の太陽に代わる人工的な太陽を作って、それを人類の究極のエネルギー源として使おうという試みになります。

私たち地球上の生命は、太陽の恵みによって生命を営むことができていますが、太陽は水素のプラズマで構成されており、核融合反応により大きなエネルギーが生み出されています。

その太陽のエネルギーを人工的に地球上で作ろうとする場合には、様々な工夫が必要になるといいます。

核融合反応を起こさせるためには、プラズマを高温・高密度にして長時間閉じ込める必要があるようです。

 

自然の太陽と人口の太陽の違い

核融合反応を起こさせるためには、プラズマを高温・高密度にして長時間閉じ込める必要がありますが、太陽は、重力閉じ込めにより、自分自身の大きな重力によりプラズマが閉じ込められています。

しかし、地上においては、そのような大きな重力を利用することはできませんので、様々な工夫が必要になるといいます。

現在最も有力視されている方式は、磁場閉じ込めと呼ばれるもので、磁場の力により核融合プラズマを閉じ込める方式だとされています。

これは、自然界の例としては、太陽の磁気ループやバン・アレン帯、オーロラなどがあるようです。

また、この他にも、レーザー・ビームなどを用いて高密度に圧縮して慣性で閉じ込める方式もあるようです。

これは、慣性閉じ込めと呼ばれる方式であり、レーザーなどによる外部蒸発と、それに伴う内部圧縮で閉じ込める方式であり、自然界の例としては、超新星爆発での内部圧縮であったり、あるいは、ロケット推進の原理としても利用されているようです。

太陽では、水素原子同士の反応によりヘリウム4が作られ、その時に、ニュートリノやガンマ線が作られます。

その反応確率は非常に小さく、反応時間は数十億年だとされていますので、これでは、地上でのエネルギー取り出しに利用することはできません。

また、核融合反応しているプラズマの温度も異なります。

太陽内部では1500万度であり、緩やかな反応ですが、地上の太陽では、加えたエネルギー以上のエネルギーを取り出す必要がありますので、1億度のプラズマ温度が必要になるといいます。

300万キロワット熱出力の核融合炉の炉心では、1立方メートルあたり300万ワットの熱が生み出されます。

一方、太陽の出力密度は1立方メートルあたり30ワットであり、1立方メートルに30ワットの電球を付けたほどの熱しか発生しませんが、太陽はその膨大な質量ゆえに、地上に多大な恵みのエネルギーを送り届けることができるのだといいます。

そのような膨大なエネルギーを持つ太陽を人工的に作ろうという、人口太陽の研究開発の歴史とは、どのようなものなのでしょうか?

 

人工太陽の研究開発の歴史

太陽のエネルギーを地上で実現するための人工太陽の研究開発は、20世紀半ばから始められ、核融合反応の研究が行われてきました。

しかし、核融合反応の地上での最初の実現は、秘密裏に進められた水素爆弾(核融合爆弾)だったようです。

アメリカでは、マンハッタン計画(1941年~1945年)として原子爆弾の開発が進められましたが、核分裂の場合には臨界量が定まり極端に大型の爆弾の製造は困難だと言われています。

それに対して、核融合爆弾ではそのような上限がないこと、ウランと異なり重水素燃料は豊富で分離も容易であること、核分裂よりも核融合による発生エネルギーの方が大きいとされています。

そのため、アメリカにおいては、水素爆弾をソ連が作る以前にアメリカで完成すべきである、という動きがあったそうです。

原子物理学者エドワード・テラーにより核融合爆弾の開発が進められ、1952年にマーシャル諸島のエ二ウェトク環礁にて、人類初の水爆実験が行われました。

水素爆弾は、原子爆弾を爆発させてその時発生するX線の放射圧により瞬時に核融合燃料を高温・高圧に圧縮する方式で、音速で伝わる爆発的な燃焼波よりも、光速で伝わるX線の放射圧を利用することにより、核融合燃料が飛び散るのを避ける設計となっているようです。

そして、核融合反応は、この時、水素爆弾の形で最初に実現したことになります。

その後、米ソ冷戦の時代などを通して、核開発は盛んに行われ、制御された形での核融合エネルギー研究開発も当初は国家機密の研究だったようです。

ただ、制御された形での核融合エネルギー研究開発は、原子力平和利用として1950年代半ばから公開され始め、1961年オーストリアのザルツブルグで、第一回プラズマ物理制御熱核融合研究国際会議が開催されました。

同じ年の1961年、名古屋大学においてプラズマ研究所が設置されています。

磁場を用いたプラズマ閉じ込めでは、ピンチ効果を利用した概念が主でしたが、ミラー型と呼ばれる両端を絞った磁場配位や、ドーナツ型にすることで閉じ込めを良くするなど、様々なアイデアが検討されてきたといいます。

アメリカにおいては、プリンストン大学のラインマン・スピッツァー博士により8の字型の配位(8の字ステラレーター)が検討され、ソ連ではプラズマに電流を流すドーナツ型配位(トカマク)の実験が進められました。

1978年には、国際トカマク炉(INTOR)計画がスタートしています。

日本においては、1985年、日本原子力研究所JT60大型トカマクが運転を開始しています。

そして、1988年、国際熱核融合実験炉(ITER)計画がスタートしました。

国際熱核融合実験炉(ITER)計画は、国際協力によって、核融合エネルギーの実現性を研究するための実験施設になります。

この核融合実験炉は核融合炉を構成する機器を統合した装置であり、ブランケットやダイバータなどのプラズマ対向機器にとって総合試験装置でもあり、計画が順調に行けば原型炉、実証炉または商業炉へと続くことになるようです。

建設候補地として青森県六ケ所村(日本)とカダラッシュ(フランス)が挙げられていましたが、2005年6月、フランスのカダラッシュに建設することが決定され、プロジェクトが進められています。

 

ミニ太陽(人工太陽)のいくつかの方法

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核融合プラズマの閉じ込めを実現させるために、これまでいくつかの方法が提案され、実験されてきているといいます。

かつては常温核融合(現在では否定されている)が話題を集めたり、素粒子のミュオンを利用したミュオン触媒核融合の研究も進められているものの、現在の熱核融合研究は、大きく二つの方式に分けられるそうです。

第一が磁場核融合方式であり、第二が慣性核融合方式になります。

★磁場核融合方式

磁場核融合方式は、磁場によりプラズマを閉じ込める方式であり、連続燃焼する「定常ボイラー」に例えることができるといいます。

ドーナツ状の磁場とプラズマ電流を利用する「トカマク」や、ドーナツ状の外部のラセン型磁場コイルを利用する「ヘリカル」があり、両端を絞った直線型磁場形成を利用した「ミラー」というのもあります。

★慣性核融合方式

慣性核融合方式は、出力の大きなレーザーや荷電粒子ビームを小さな燃料球(ペレット)に照射し、燃料球の表面が燃焼・膨張する反動でその内側の部分が圧縮加熱(爆縮)されることを利用する方法であり、圧縮方法はロケット推進の原理に似ているそうです。

慣性核融合方式は、「間欠エンジン」に例えることができるといいます。

磁場核融合方式でも慣性核融合方式でも、核融合炉では心臓部に当たる炉心プラズマでの核融合反応によりエネルギーを発生させます。

そして、核融合発電は、原子力発電と同様に、核エネルギーを熱に変換して蒸気タービンを回して発電するシステムになります。

核融合発電は、二酸化炭素を発生しないので、地球の温暖化や酸性雨被害を起こさない「環境にやさしい」エネルギー源だとされています。

 

国際熱核融合実験炉(ITER)計画とは

核融合エネルギーの宣伝パンフレットには、「1グラムの燃料から8トンの石油のエネルギー」が得られると書かれているそうです。

核融合に用いる重水素は、天然の水1リットルに0.034グラム含まれているそうなので、理論上は「1リットルの水=300リットルの石油」ということが言えるようです。

それくらい、核融合エネルギーの力は大きいと言えそうです。

重水素(D)のみを用いたプラズマ実験は、日本をはじめ、世界の多くの「トカマク」で行われ、DD核融合反応による中性子の発生を確認してきているといいます。

プラズマの閉じ込めの研究開発は着実に進められてきており、1970年代には、世界各国で本格的なトカマク実験が開始され、その実験結果を元にして、国際熱核融合実験炉(ITER)の計画も進められているようです。

人類の究極のエネルギー源を求めて熱核融合研究は半世紀に亘って続けられており、その成果の結実とも言えるものが、国際熱核融合実験炉(ITER)計画になります。

国際熱核融合実験炉(ITER)計画は、2005年6月に、フランスのカダラッシュでの建設が決定しており、ITERの機構長には、日本の池田要さん(前駐クロアチア特命全権大使)が選ばれました。

国際熱核融合実験炉(ITER)計画の目的は、自己点火および長時間運転の実証、および、核融合工学技術の実証にあるといいます。

装置は、プラズマとダイバータ、真空容器、超伝導コイル、プラズマ加熱・電流駆動装置、そして、クライオスタットなどから成り立っているようです。

超伝導コイルによる磁場強度は5.3ステラであり、プラズマ電流は15メガアンペアまで流す予定で、400秒間プラズマ燃焼で50万キロワットの熱出力を目指しているようです。

国際熱核融合実験炉(ITER)計画の総経費は113億ユーロであり、建設に10年間、運転に20年が予定されているようです。

近い将来、ミニ太陽とも言える、人工太陽ITERから発電される電気が使用される日も近いのかも知れません。

 

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