[記事公開日]2016/03/13
[最終更新日]2016/04/05

宇宙食の作り方はNASAのアポロ計画で導入された食品加工技術で大きく進歩

    アポロ計画のためにNASAは壮大な宇宙食開発計画を立てた

初期の宇宙食は錠剤やチューブ入りの食事や一口サイズの固形食

『宇宙食で飛行士が栄養や食事を安全に摂れるようにNASAはハサップ(HACCP)を考案』、こちらの記事の中でも書きましたが、初期の宇宙食は喉に食べ物がつまるのではないかとの不安から、チューブに入ったものやトレイに充填されたペースト状のものが多く、離乳食に近いものでもあったため、宇宙飛行士からの評判も悪かったようです。

ただ、当時は、宇宙環境すなわち無重力の状態で、果たして人が正常に食事を摂れるのか、食品をうまく飲み込めるのかが分からなかったので、嚥下(食品を飲み下すこと)に支障がないような、錠剤やチューブ入りの食事が開発されたようです。

ですから、初期の宇宙食と言えば、一口サイズの固形食やクリーム状、あるいはゼリー状の食べ物が中心でした。

しかし、その後、人間は無重力状態でも問題なく食べ物を飲み込め、消化出来ることが分かり、現在の宇宙食は種類も豊富になり、その種類も千種類ほどもあるそうです。

そして、宇宙食の歴史に革命をもたらしたのは、アメリカが行ったアポロ計画だと言います。

 

NASAのアポロ計画で宇宙食は大きく進歩

1961年5月、アメリカの第35代大統領のケネディ大統領は、議会演説において、今後10年以内に人類を月に送る計画を発表しました。

これが有名なアポロ計画ですが、このアポロ計画によって、宇宙食を作る食品加工技術も大きく進歩することになります。

月までの飛行は長く、月周回飛行までに3日間の飛行を必要としたので、この長期間の宇宙飛行に備えるためには、十分な食料の供給が必要となります。

長期間の宇宙飛行に備えるための宇宙食の開発が必要となり、そのための食品加工技術も研究されることになります。

また、この時期には、無重力状態での人間の食事に対する知識も蓄積されてきており、その結果として、無重力下でも、人間は普通に嚥下(食物を下すこと)できることが分かってきました。

そこで、旧来の錠剤やチューブ入りの食事や一口サイズの固形食でなくても大丈夫だということも分かってきたので、もっと本格的な食事に近いものを供給できるということも分かってきていました。

ただ、宇宙食には、依然として制約が多くありました。

宇宙食は、主に無重力状態にあり、居住スペースが狭く設備的にも限られた宇宙船の中で、宇宙飛行士が食べる食事になりますので、宇宙食が満たすべき要素が色々とあるようです。

アメリカがアポロ計画を遂行するにあたって、NASA(アメリカ航空宇宙局)が解決すべき宇宙食の問題は、大きく分けると以下のようなものだったようです。

★長期保存が可能であること

宇宙空間での物資補給は不可能であるか、または、限られた回数しか行えないため、長期保存が可能な食事が必要となります。

宇宙船には、食品保存用冷凍庫も冷蔵庫もないので、常温で長期間保存可能なものが必要でした。

★できるだけ軽量であること

宇宙船の積載貨物の重量は限られているため、できるだけ軽量であることが望まれます。

★飛散しない

宇宙船内では、周りがミッション達成や生命維持に必須の精密機器だらけです。

このため、砕けたり、汁が飛ぶようなものは、これらの精密機器にトラブルが生じたり、後片付けが大変になる恐れがあります。

それを防止するためには、飛散しない食事が必須となります。

★宇宙で食中毒を起こさないよう完全な衛生性を持っている

宇宙空間で、万一、宇宙飛行士が食中毒を起こすと、大変なことになります。

このため、宇宙で食中毒を起こさないような、完全な衛生性を持った宇宙食が必要になります。

これらの問題を解決するために、NASA(アメリカ航空宇宙局)では、アポロ計画のために、壮大な宇宙食開発計画を立てたと言います。

 

NASAが立てたアポロ計画のための壮大な宇宙食開発計画

NASAは、宇宙食が持っている様々な制約の問題を解決するために、アポロ計画のための壮大な宇宙食開発計画を立てます。

これにより、宇宙食は大きく進歩することになりますが、NASAが開発した宇宙食の食品加工技術の主なものは、「凍結乾燥技術(フリーズドライ)」、「レトルトパウチ技術(レトルト殺菌技術)」であり、これにより、アポロ計画の宇宙食は、豊富なメニューを揃えることが可能となりました。

それに加えて、NASAは、宇宙食を製造するための新しい衛生管理手法として、「総合衛生管理(HACCP)」の手法も開発しました。

★凍結乾燥技術(フリーズドライ)

「凍結乾燥技術(フリーズドライ)」は、優れた食品保存技術ですが、凍結・真空という技術を使うので、コストが非常に高くなります。

「凍結乾燥技術(フリーズドライ)」は1960年代のアメリカで、インスタントコーヒーの加工に取り入れようとした最新技術であり、これは、価格が高くても売れる嗜好品なので最初に実用化しようとしたようです。

そして、NASAは、「凍結乾燥技術(フリーズドライ)」をいち早くアポロ計画のための宇宙食に採用しました。

食品を凍結して高真空下に置くと、水分は昇華によって除かれ、できた製品の重量は大幅に減少しますので、ロケットの搭載重量に制限がある宇宙食としては最適な技術であるとも言えます。

しかも、低温下で水分の除去が行われるので、食品成分の変化がほとんどなく、風味や栄養が保たれるのが利点であり、宇宙食に最適な技術であるとも言えます。

「凍結乾燥技術(フリーズドライ)」した宇宙食は、喫食するときには水で戻す必要がありますが、宇宙の無重力空間では、水の取り扱いはやっかいとなります。

そこで、NASAは、注入口付きの容器の開発と、給湯器を開発しましたが、この技術は、その後のスペースシャトルや、国際宇宙ステーション(ISS)にも受け継がれていると言います。

★レトルトパウチ技術(レトルト殺菌技術)

「レトルトパウチ技術(レトルト殺菌技術)」は、略してレトルト食品とも呼ばれます。

レトルト食品の技術は、カレーで有名であり、日本で最初のレトルトカレーが大塚食品から発売されたのが1968年になりますが、アポロ計画の始まった1961年よりも後のことになります。

元々、食品を気密性の容器に充填して加熱殺菌すれば長期間保存できることは、200年以上前にフランス人のニコラ・アペールによって発明され、缶詰として実用化されています。

缶に代わってフレキシブルなアルミ袋を用いるのが、レトルト(パウチ)食品になりますが、アルミ袋は缶よりもその形態が薄いので、熱の伝わりが速く、中身の食品が短時間で殺菌できます。

そのために、缶詰と比較すると風味の劣化が少なく、レトルト(パウチ)食品では調理したままの風味が残りますし、当然、栄養素の破壊も少なくて済みます。

現在では多くのインスタント食品がレトルト(パウチ)食品として市販されていますが、レトルト(パウチ)食品の技術は、1950年代にアメリカで開発が始まったものだと言います。

そして、この「レトルトパウチ技術(レトルト殺菌技術)」をいち早く採用したのがNASAであり、アポロ計画のための宇宙食に採用することになります。

NASAが開発した宇宙食の食品加工技術の主なものは、「凍結乾燥技術(フリーズドライ)」、「レトルトパウチ技術(レトルト殺菌技術)」であり、これにより、アポロ計画の宇宙食は、大きく進歩し、豊富なメニューを揃えることが可能となりました。

アポロ計画の宇宙食のメニューには、牛肉のボットロースト(鍋煮込み)やビーフシチューなどの肉料理をはじめとして、サラダやデザートなど、様々な食事や飲み物が豊富に用意されたと言います。

そして、アポロ計画では、宇宙食の開発にあたって、NASAは重要な技術も開発していますが、それが、宇宙食を製造するための新しい衛生管理手法としての「総合衛生管理(HACCP)」の手法になります。

 

NASAは宇宙食を安全に製造するための手法「総合衛生管理(HACCP)」を開発

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宇宙飛行士が宇宙で食中毒になったりしたら大変なことになります。

そこで、NASA(アメリカ航空宇宙局)は、食品の安全性を確保する方法として、「総合衛生管理(HACCP)」の手法を考案しました。

NASAが開発したハサップ(HACCP)は、厚生労働省によって「危険分析重要管理点」とも和訳されていますが、何かと言うと、加工食品を製造する際の衛生管理の手法になります。

宇宙では食中毒を絶対に避けなければなりませんので、宇宙食には完全な衛生性が求められることになります。

そのためにNASAが開発した手法が「総合衛生管理(HACCP)」の手法でした。

従来、食品企業が行っていた衛生性を検証する方法は、抜き取り検査という手法であり、例えば100個の製品から1個を抜き取り、それを微生物検査して安全であれば、残りの99個も安全だと推定する手法でした。

しかし、NASAは、100個が100個とも全て安全であることを保障する方法として、「総合衛生管理(HACCP)」の手法を開発しました。

宇宙では食中毒を絶対に避けなければならないので、宇宙食を製造するために、新しい衛生管理手法を開発した訳です。

「総合衛生管理(HACCP)」とは、簡単に言えば、食品の加工の段階、すなわち原料から製造・調理・製品までの各段階を衛生的に管理して、製品の衛生性を確保する手法になります。

まず、各段階で、どのような処理を行えば、どう衛生性に影響が出るかを確認して、衛生性が確保できるように食品を処理し、できた製品全ての衛生性を確保します。

調理過程のどこで食中毒菌による汚染、増殖が起こるかなどを調べる「危険の分析」を行い、それを防ぐにはどういう手段があるかを考えるものとなります。

また、注意を払うべきポイントを「重要管理点」と呼び、正しい調理法が守られていることを常にチェックしています。

NASAが開発した「総合衛生管理(HACCP)」による製造は、その後の宇宙食に全て取り入れられていると言います。

それだけではなく、市販の食品でも「総合衛生管理(HACCP)」の手法を導入することは、衛生性を確保した商品の生産に適することから取り入れる企業が増えており、アメリカやヨーロッパはもちろんのこと、日本においても導入され、施行されています。

日本では「総合衛生管理(HACCP)」は1996年5月から、食品衛生法において導入、施工されており、厚生労働省が企業に導入を勧めています。(厚生労働省は「危険分析重要管理点」と和訳)

「総合衛生管理(HACCP)」は、宇宙技術が日常生活に大きな変革をもたらした良い例とも言えます。

NASAは、宇宙食が持っている様々な制約の問題を解決するために、アポロ計画のための壮大な宇宙食開発計画を立てました。

NASAが開発した宇宙食の食品加工技術の「凍結乾燥技術(フリーズドライ)」や「レトルトパウチ技術(レトルト殺菌技術)」により、アポロ計画の宇宙食は豊富なメニューを揃えることが可能となっただけではなく、宇宙食を製造するための新しい衛生管理手法としての「総合衛生管理(HACCP)」の手法も開発され、宇宙食は大きく進歩することになりました。

 

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