[記事公開日]2015/12/12
[最終更新日]2016/04/09

宇宙太陽光発電(SSPS)とはマイクロ波やレーザー光で送電するものでJAXAが研究中

宇宙太陽光発電(SSPS)とは何か?

宇宙太陽光発電とは、宇宙空間上で太陽光発電を行い、その電力を地上に送る発電方法のことであり、これを利用した発電システムは宇宙太陽光発電システム(Space Solar Power System)と呼ばれ、SSPSと表記されます。

一般に知られている「マイクロ波発電」はこの発電方法の一種で、伝送手段としてマイクロ波を用いているものの総称になります。

地上での太陽光発電の欠点としては、太陽電池の大規模な設置が難しいこと、夜は発電不可能で天候にも左右されて不安定であることがあげられます。

それを克服する構想が、宇宙太陽光発電(SSPS)になります。

太陽光は地表に届くまでに、大気の吸収などにより減衰し、天候によって変化もします。

そのため、大気圏外で発電し、大気の透過率の高い波長の電磁波に変換して地上へ届けたほうが、損失が少なく効率が良くなり、安定もすることになります。

また、軌道によっては日没の影響も減らすことができるため、約10倍程度宇宙の方が有利であるとされているようです。

そこで構想されたのが、宇宙太陽光発電(SSPS)という計画になります。

宇宙太陽光発電は、宇宙空間にある発電衛星と地上の受信局によって行われるものになります。

地球の衛星軌道上に設置した施設で太陽光発電を行い、その電力をマイクロ波またはレーザー光に変換して地上の受信局(構想では砂漠または海上に設置する)に送り、地上で再び電力に変換するという構想になっています。

発電衛星と送電を中継する送電衛星を利用すれば夜間でも安定的に地上への電力供給が期待でき、無尽蔵の電力をほぼ24時間365日にわたって利用できることから、原子力発電同様にベース電力としての利用が可能だとされています。

宇宙太陽光発電(SSPS)の歴史は、1968年に遡ります。

 

宇宙太陽光発電(SSPS)の歴史

宇宙太陽光発電(SSPS)の最初の計画は、1968年にアメリカのピーター・グレーザー博士が提唱したのが始まりとされています。

宇宙空間に巨大な太陽電池とマイクロ波送電アンテナを配置し、太陽光エネルギーを電気に変換した後にマイクロ波に変換して地球上に設置した受電アンテナ(レクテナと呼ばれます。)へ送電、地上で電力に再変換し、エネルギー源として用いる構想になります。

具体的には、赤道上の高度約3万6千キロメートルの静止軌道上に静止衛星を浮かべ、発電した直流電力を電磁波に変えて送電して、地上のレクテナ(受電アンテナ)で受けて電磁波を再び電力に変換する方式だということのようです。

マイクロ波の場合には、電子レンジなどで使われている2.45ギガヘルツ(1ギガヘルツは10億ヘルツ)が計画されているようです。

究極的には化石燃料に頼らない社会を構築可能なアイデアとして提唱されました。

その当時は、アポロ計画が推進されていた時代で、大規模宇宙構造物を有人で建設する方法が検討されたようであり、また、その数年後には第1次オイルショックが発生したこともあり、宇宙太陽光発電(SSPS)というアイデアは、社会から注目を集めたようです。

宇宙太陽光発電(SSPS)では、当初マイクロ波送電が計画されており、その後、レーザー光利用も検討されるようになったようです。

 

マイクロ波送電方式とレーザー光利用方式

宇宙太陽光発電(SSPS)は、当初はマイクロ波送電として構想され、いくつかの型式が提案されたようです。

★基準モデル

1970年代に提案された基準モデルでは、発電容量1千万キロワット(地上ではその半分の500万キロワット)であり、太陽電池は5キロメートル×10キロメートルで静止衛星の総重量は5万トン、地上のレクテナ(受電アンテナ)も10キロメートル×13キロメートルと超巨大だったそうです。

ただ、その建設費は約25兆円と試算され、採算が取れないとの結論で、計画は中断されました。

★サンタワー方式

建設費が25兆円と膨大であり採算が取れない基準モデルの次世代宇宙太陽光発電(SSPS)として提案されたのが、経済的なサンタワー方式になります。

サンタワー方式では、25万キロワットの発電で建設費80~150億円と試算されたようです。

また、他の方式として、ソーラーディスク方式も提案されたようです。

★ソーラーディスク方式

ソーラーディスク方式は、回転する巨大薄膜太陽電池の円盤を利用したものになります。

マイクロ波による宇宙太陽光発電(SSPS)においては、地上に送られるマイクロ波の強度は、安全性から決められるとのことであり、通常の地上での太陽光強度1kwのほぼ1/4に相当する値230wを、レクテナ(受動アンテナ)での最大電力としているようです。

送信アンテナから送られるマイクロ波は、この値の百倍の23kwが想定されているようです。

その場合でも、マイクロ波から電力への変換効率の高さと曇天や夜間に左右されない点から地上での太陽光利用の4~5倍以上になると考えられているとのことです。

また、宇宙太陽光発電(SSPS)においては、1970年代にマイクロ波を用いる方式が発案されましたが、その後は、近赤外レーザー方式も登場しています。

レーザーの高指向性と太陽光によるレーザー直接生成の高効率性、レーザーによる水素の直接生成の可能性などで、波長1ミクロン領域の近赤外レーザー方式が話題となっているようです。

★レーザー光方式

レーザー光はマイクロ波と比較して、4~5桁ほど波長が短くなり、回折広がりが少なくなるため地球上でのビーム受光径を数百メートルほどに抑えることができると言います。

また、太陽光によりレーザーを直接励起することが可能となり、マイクロ波方式と比較してシステムが簡略化されることでペイロード(搭載量)の軽減、コストの削減が可能となります。

マイクロ波の場合は、システムの総効率は7.3%しかないようですが、レーザー光の場合は、もっと効率が高くなるようです。

マイクロ波をレーザー光に変えることで、商用発電の総効率を7.3%から17%にまで高めることができると言います。

また、レーザーは、商用電源網としてだけではなく、水の電気分解による水素製造や、レーザーからの光触媒による水素製造も構想されているようです。

レーザーは、宇宙空間で様々な応用に用いることができるようです。

宇宙衛星間でのレーザーによるエネルギーの送受電、人工衛星等の姿勢制御や軌道維持のためのレーザー、推進レーザーを利用したソーラーセイル、スペースデブリの除去など、様々な応用が考えられるそうです。

レーザー利用によるSSPSの利点は、マイクロ波利用によるものと比較した場合、次のようになります。

*レーザー方式での宇宙太陽光発電(SSPS)の利点(マイクロ波利用との比較)

★レーザーは指向性があるので、受電アンテナが小さくてよい。

★近赤外レーザーは大気や雲による減衰がほとんどない。

★レーザーへの直接変換で高効率

★レーザーによる水素の直接製造の可能性

レーザー方式やマイクロ波方式も含めた、宇宙太陽光発電(SSPS)の長所と短所は、次のようになるようです。

 

宇宙太陽光発電(SSPS)の長所と短所

宇宙太陽光発電(SSPS)の長所と短所をまとめると、だいたい次のようになるようです。

※宇宙太陽光発電(SSPS)の長所

★ 地上の太陽光発電に比べて設備あたりの発電量が多い。
静止軌道の場合、地球の影に入るのは春分の日と秋分の日の周辺の夜中だけと極めて短く、ほとんど1年中24時間発電できる。

★ 環境汚染を引き起こさない。

★ 資源の枯渇の心配がない。

★ 地上の受電設備をレクテナ(マイクロ波を直流電流に変換するアンテナのこと)にすることで、地上に照射されるエネルギー密度を、自然物に影響のないレベルに下げられる。

※宇宙太陽光発電(SSPS)の短所

★ 他の自然エネルギーに比して安定したエネルギー供給が可能になるものの、初期投資が非常に高額になる。

★ 太陽電池を用いる場合、面積が巨大になり宇宙塵やスペースデブリなどへの対処が難しい。

★ 宇宙での大型構造物であるため、故障した場合の修理が非常に難しい。
宇宙線による被曝を考えれば作業員による建造や修理も難しいと言わざるを得ない。

★ 衛星軌道上に設置した場合、ソーラーセイルと同様に太陽光圧の影響が大きく、頻繁に軌道修正が必要であり、定期的に推進剤を補充する必要がある。

★ 周波数によっては漏洩電波、高調波により衛星、その他無線通信への影響がある。

★ 受信設備以外の地点にエネルギーを照射することによる軍事転用や「誤射」のリスクが伴う。

★ レーザー伝送の場合、受信設備の天候に影響を受ける。

★ 衛星が破壊されるリスクがある。

宇宙太陽光発電(SSPS)に対する各国の対応と現状は、次のようなものになるようです。

 

宇宙太陽光発電(SSPS)に対する各国の対応と現状

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宇宙太陽光発電(SSPS)の計画は、1968年にアメリカのピーター・グレーザー博士が提唱したアイデアを基礎として、その後、アメリカ、欧州では様々なタイプの宇宙太陽光発電(SSPSの)コンセプトがまとめられてきたようです。

しかしながら、残念なことに、最近においては、日本以外の各国は、財政上の問題や政策上の方針などにより、国としての継続的な研究は行っていないという状況にあるとのことです。

ただ、幸いなことに、私たちの日本では、1980年代から宇宙太陽光発電(SSPS)に関する組織的な研究活動が開始され、90年代には宇宙科学研究所(現宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)を中心とした大学及び国立研究所の研究者により1万kW級の「SPS2000」の設計が、2000年代に入りJAXA及び経済産業省により100万kW級の宇宙太陽光発電(SSPS)の検討が行われています。

また、宇宙基本計画においても、しっかりと明記されていますので、大きな可能性が秘められていると言えます。

 

日本では宇宙基本計画で宇宙太陽光発電(SSPS)への取り組みを明記

アメリカや欧州を始め、日本以外の各国では、財政上の問題や政策上の方針などにより、国としての継続的な研究は行っていないという状況の中にあって、唯一、私たちの日本だけは、国をあげて、宇宙太陽光発電(SSPS)への取り組みを行っていることは、頼もしい限りであり、大きな期待と可能性を感じさせてくれます。

宇宙基本計画(平成27年1月9日宇宙開発戦略本部決定)では、
(2)具体的取組
②個別プロジェクトを支える産業基盤・科学技術基盤の強化策
iii)将来の宇宙利用の拡大を見据えた取組
の箇所において、

エネルギー、気候変動、環境等の人類が直面する地球規模課題の解決の可能性を秘めた「宇宙太陽光発電」を始め、宇宙の潜在力を活用して地上の生活を豊かにし、活力ある未来の創造につながる取組や、太陽活動等の観測並びにそれに起因する宇宙環境変動が我が国の人工衛星等に及ぼす影響及びその対処方策等に関する研究を推進する。』

と記されています。

JAXA(宇宙航空研究開発機構)では、1998年から、宇宙太陽光発電(SSPS)への調査・研究が進められており、今後、研究を継続的に行うことで2020年から2030年をめどに商用化を可能にすることを目標にしているとのことですので、今後の研究に大きな期待を寄せたいと思います。

 

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