[記事公開日]2016/01/02
[最終更新日]2016/04/09

宇宙探査機はスイングバイ航法で惑星の重力を利用して軌道や速度を変える

緑は惑星の公転速度、赤は探査機の、惑星に対する速度と天体の公転速度の合成速度を示す。公転する天体の後ろ側から進入すると、離脱時には増速している。

スイングバイ航法とは

NASAが打ち上げた探査機「ボイジャー」など、宇宙を探査する惑星探査機は、スイングバイと呼ばれる航法を使って、惑星に近づく時に速度や軌道を変えてきたといいます。

スイングバイという航法を使えば、惑星探査機が軌道や速度を変えることができるということになります。

探査機が惑星の重力を利用して軌道を変更する方法を、スイングバイと呼びますが、この航法の特徴は、探査機の進行方法を変えるだけでなく、加速したり減速したりして、速度も変えることができるということのようです。

例えば、NASAが打ち上げた探査機「ボイジャー2号」は、地球を出た時は、木星まで行ける速度しかありませんでしたが、スイングバイで加速することによって、それ以上の飛行が可能になり、木星を探査した後、土星、天王星、海王星へと飛行したそうです。

探査機「ボイジャー2号」は、木星の重力を利用して軌道を変更し、次の土星へ、さらに天王星へと向かう軌道に乗ったようです。

スイングバイ航法は、天体の万有引力(重力のこと)を利用して探査機の運動方向を変更する技術だといいます。

 

スイングバイ航法は天体の公転運動エネルギーを利用して探査機の軌道や速度を変える技術

スイングバイとは、天体の万有引力(重力のこと)を利用して宇宙を探査する探査機の運動方向を変更する技術であり、天体の公転運動エネルギーを利用することで、探査機を増速したり減速したりすることができるといい、重力アシストあるいは重力ターン、近傍通過とも呼ばれます。

スイングバイは、天体の万有引力(重力のこと)および公転運動エネルギーを利用することにより、燃料をほとんど使わずに軌道を変更し、速さも変えることができるのが特徴であり、このため、宇宙探査機を惑星や太陽系外へ送り出すためによく使われるといいます。

スイングバイは燃料に頼らず速度を変えることが可能なので、ロケットや探査機に搭載する燃料の節約になり、同じ総重量の探査機であれば、そのぶん多くの機器を搭載することが可能になるようです。

惑星に一度接近してから遠ざかると、燃料を消費して噴射を行わなくても、接近する前より速度が速くなるといいますが、スイングバイのこの原理とは、どのようなものなのでしょうか?

実は、惑星に固定された観測者から見ると、スイングバイの前後で探査機の速度は変わっておらず、探査機はある速度で惑星に落ち込み、元と同じ速度で出て行くといいます。

しかし、惑星は動いているため、惑星外(つまり私たち)から見ると、惑星から遠ざかる時の探査機の速度は惑星の軌道速度が加算されたものになるということのようです。

例えば、ある探査機が、惑星Aに接近しており、惑星Aとの相対速度が40km/sだとします。

そして、惑星Aが軌道速度30km/sで動いているとします。

そうすると、惑星Aに固定された観測者から見ると、探査機は近づく時も離れる時も同じ速度で見えますが、探査機の方は、惑星Aに近づいて離れる時に、惑星Aの公転運動エネルギーを得て、速度が速くなるという原理のようです。

すなわち、40km/s(惑星Aとの相対速度)+30km/s(惑星Aの軌道速度)=70km/sのようになるようです。

スイングバイ航法のエネルギー源は惑星の公転運動エネルギーだということになります。

そして、スイングバイ航法には、このように速度が加速する「加速スイングバイ」と、速度が減速する「減速スイングバイ」があります。

★加速スイングバイ

探査機が惑星の公転方向の後方を通る場合、惑星近辺を通りすぎた後に、探査機が惑星から離れていく際の方向は、惑星の公転と同じ方向になるので、このときの速度は、惑星に接近する時の速度に公転速度のぶんが足された速度になります。

つまり、惑星に対する探査機の速度は、スイングバイの前後で変わっていませんが、探査機の軌道が変わったため、惑星に対する探査機の速度は速くなるのです。

なお、厳密にいえば、探査機の軌道が惑星から遠い場合などは、探査機が惑星から離れていく際の方向が惑星の公転と同じ方向にならないこともあるといい、その場合も増速する量は少なくなるが、増速することに変わりはないようです。

★減速スイングバイ

逆に、惑星の公転方向の前方を通る場合、探査機は惑星の公転と逆の方向へと向きを変え、公転速度の分が減った速度になるようで、この場合は減速スイングバイと呼ばれます。

 

スイングバイ航法の特徴

天体の質量と公転速度が大きいほど、軌道や速度の変化を大きくすることができるといいます。

質量の小さな天体では、公転速度が大きくても軌道を変えることができず通過するだけになります。

逆に、質量が大きくても公転速度が小さな天体では、軌道は変えられても速度への影響は小さなものになるようです。

天体に近づくほど軌道は大きく曲げられ、逆に天体から遠くを通過するほど軌道は変わらなくなるため、スイングバイを使って予定の軌道に変更するためには、天体の重力圏に入る前の軌道調整にかなりの精密さを要求されるといいます。

例えば、JAXAの工学実験探査機「はやぶさ」は、地球近くのある1 kmの範囲内を、速度の誤差1 cm/s以内で通過するよう、スイングバイを行う29日前と7日前に軌道が微調整されているそうです。

軌道を調整する際には燃料を用いて制御を行いますが、このときにも燃料消費ができるだけ最低になるように、また、地球と交信するためのアンテナの向きを変えないなど他の条件も守れるように、注意が払われるといいます。

 

宇宙を探査する惑星探査機が行なったスイングバイ航法の例

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スイングバイを初めて使用した探査機は水星探査機「マリナー10号」であり、1974年2月5日に金星を用いたスイングバイによって太陽を約半年(水星の公転周期の約2倍)で周回する軌道に乗り、水星へと向かいました。

★太陽系外へ脱出した例

1977年に打上げられた「ボイジャー」1号と2号が、地球軌道から木星へ向けて出発したときの速度は地球の公転速度を足して40 km/s ほどであり、地球の公転軌道上から太陽系を脱出するのに必要な42.1 km/s を満たしていませんでしたが、木星でスイングバイを行い、増速することで太陽系を脱出することができたといいます。

「ボイジャー 2 号」の場合は、地球軌道から約36 km/s の速度で出発したものの、木星軌道に達したときには、速度は約10 km/s になっていましたが、木星をスイングバイして、約21 km/s まで増速したようです。

木星軌道での太陽系脱出速度は18.5 km/s なので、木星スイングバイにより太陽系を脱出できるようになったといいます。

その後、土星軌道に到達したときには、速度は約16 km/s になっていましたが、土星をスイングバイし、約 24 km/s まで増速したようです。

さらに、天王星でわずかながら増速、海王星では逆にわずかながら減速し、太陽系を脱出していったといいます。

★推力不足を補った例

1984年10月に国際ハレー彗星観測艦隊といわれた惑星探査機群に参加していた NASA の国際彗星探査機(ICE)は、既存の残存燃料の少ない衛星を再利用する形で急遽仕立てられたものであり、5 回に及ぶ月スイングバイにより、ハレー彗星のコマから噴出される尾の観測を行いましたが、この時のスイングバイは、NASA のスイングバイ魔術ないしは悪魔的スイングバイ技術といわれたそうです。

また、1989年10月18日に打上げられたアメリカの木星探査機ガリレオは、スペースシャトル「アトランティス」に搭載して打ち上げられ、さらに、ロケットを使って地球の軌道を離れましたが、このロケットは「チャレンジャー号」の事故もあって当初の計画より推力の少ないものに変更されていたそうです。

そのため、そのままでは推力不足で木星に向かうことができないので、一旦逆の金星に向かい、金星、地球、地球とスイングバイを行って増速する方法を用いて木星に向かったといいます。

この方法は VEEGAと呼ばれるそうです。

 

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